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乳がんホルモン療法による副作用を改善する漢方薬

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乳がんホルモン療法による副作用を改善する漢方薬

乳がんに対するホルモン療法

乳がんの7~8割は、女性ホルモンであるエストロゲンによってがん細胞が増殖するタイプ(エストロゲン受容体陽性)であることがわかっています。手術によって乳がんを完全に切除できたとしても、すでに微小転移が起きている可能性があるため、エストロゲン受容体陽性の乳がんではホルモン療法が選択されます。ホルモン療法とは、エストロゲンの働きをブロックすることでがん細胞の増殖を抑える治療法です。
以下、主なホルモン治療薬とその副作用を挙げます。

  1. アロマターゼ阻害薬(アリミデックス、フェマーラ、アロマシン)
    閉経後の方に用いられ、副腎やがん細胞でエストロゲンが産生されるのを防ぎます。
    代表的な副作用は、ほてり・多汗、関節痛などです。
  2. 抗エストロゲン薬(タモキシフェン、フェアストン、フェソロデックス)
    タモキシフェンは閉経前・閉経後ともに、フェアストンとフェソロデックスは閉経後のみ用いられます。エストロゲンが乳がん細胞のエストロゲン受容体に結合し、活性化するのを抑えます。代表的な副作用は、無月経・月経異常、ほてり・多汗、倦怠感などの更年期様症状です。
  3. LH-RHアゴニスト(リュープリン、ゾラデックス)
    閉経前の方に用いられます。LH-RHは脳の視床下部から分泌されて脳下垂体の受容体に結合し、その刺激を脳下垂体が卵巣へ伝えてエストロゲン産生を促します。LH-RHアゴニストはLH-RHと似た物質であるため、脳下垂体が「LH-RHが多すぎる」と判断して卵巣へ刺激を伝えるのをやめ、エストロゲンの産生を低下させる効果があります。副作用は、抗エストロゲン薬と同様の更年期様症状です。

ホルモン療法の期間は5~10年

海外で行われた複数の臨床試験において、エストロゲン受容体陽性の乳がん患者のうちタモキシフェンを5年間服用した群・10年間服用した群を比べると、10年間服用群のほうが乳がんによる死亡リスク・再発リスクがやや低くなることが報告されています。そのため、近年はホルモン療法の期間を5年ではなく10年へ延ばすケースが増えてきました。ホルモン療法による副作用症状がある場合、副作用を抱えながら過ごす5年あるいは10年という時間は、とても長く、つらいものになるかと思います。

ホルモン療法の副作用対策(西洋医学と漢方との比較)

ほてり・のぼせ、多汗、こわばり・痛み・ばね指などの関節症状、倦怠感、イライラ、不眠、頭痛、吐き気、など乳がんホルモン療法によってさまざまな副作用を生じることがあります。

ほてり・のぼせ(いわゆるホットフラッシュ)

ホットフラッシュに対しては、SSRI(抗うつ薬の一種)が有効であると報告されています。しかし、適応外であるうえ、一部のSSRI(パキシルなど)がタモキシフェンの作用を減弱させる可能性も指摘されているため、使用しづらいのが実情です。
漢方においては、ホットフラッシュのみならず発作性の動悸・イライラ・頭痛・不眠などの症状をまとめて「気逆(気が上へ衝きあがる)」という状態ととらえ、山梔子や黄連などの「気を降ろす」生薬が入った漢方薬を使って治療します。つまり漢方では、ホットフラッシュ以外の動悸・イライラ・頭痛・不眠など「気逆」に含まれる症状も一緒に改善を図ります。

関節のこわばり・痛み・ばね指

関節痛に対しては一般的な鎮痛薬が処方されますが、無効なことが多いようです。少なくとも、関節のこわばりに関してはほとんど効果がありません。ばね指に関しては整形外科領域で関節注射や手術(腱鞘切開)が行われ、かなりの有効性が報告されています。
漢方では、関節のこわばり・痛み・ばね指に関してはおおまかに「動かすと改善するのか」「使い過ぎると悪化するのか」の2つに分けて考えます。動かさないと(あるいは寝ている間に)痛くなったりこわばったりし、動かしているうちに改善するタイプは「瘀血(血液のめぐりが悪い状態)」ととらえ、末梢の血液循環を改善する牡丹皮や桃仁、紅花などの生薬が入った漢方薬を用います。
一方、ずっと動かしている(使い過ぎる)と痛みが悪化したり、筋肉が攣ったり(こむら返りなど)、ばね指になったりするタイプは「血虚(関節や筋肉の潤滑液が)」ととらえ、潤いを取り戻す当帰や地黄、芍薬などの生薬が入った漢方薬を用います。「血虚」タイプであれば、ほかに皮膚の乾燥・脱毛しやすいなどの症状も伴っているはずです。「瘀血」と「血虚」の両方にあてはまる場合は、双方に有効な生薬を含む漢方薬を用いて治療を行います。

そのほか、上記以外の副作用症状に関してもさまざまな漢方薬を用いて対処してゆくことが可能です。

「副作用だから、しょうがない」と諦めていませんか?

海外の報告では、ホルモン療法を必要とする乳がん患者の2割が、副作用などの理由により5年あるいは10年の治療期間を完遂できないとされています。確かに、エストロゲンを完全にブロックしているぶん、通常の更年期症状よりもホルモン療法による副作用症状のほうが治りづらい面があります。それでも、少しでも副作用をやわらげながら5~10年にわたる治療期間を乗り切るため、漢方を用いることをお薦めしています。

(文責・岡本英輝)

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