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胃腸虚弱

胃腸虚弱(吐き気・胃もたれ・食欲不振・腹痛・下痢など)

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上に挙げた薬剤のほか、逆流性食道炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの徴候があればプロトンポンプ阻害剤(ネキシウム、タケプロン、オメプラール、パリエットなど)やH2ブロッカー(ガスター、シメチジンなど)や胃粘膜保護剤(レバミピド、ムコスタなど)が併用されます。また、下痢であればトリメブチンやビオフェルミン製剤が併用されることもあります。

吐き気や食欲不振に対する西洋医学的治療

筆者は、がんや心不全・呼吸不全など慢性進行性疾患の患者さんが有する難治性の吐き気や食欲不振の専門家として、2007年より千葉大学附属病院緩和ケアチームに所属して治療にあたり、数々の学会報告および論文発表を行ってきました。特に、吐き気に対して頻用されるメトクロプラミドやドンペリドンなどのドパミンD2拮抗薬は、長期服用すると嚥下(飲み込み)能力が低下したり、手の震えや小刻み歩行などを生じたりすることを注意喚起してきました。また、食欲不振や胃もたれ・腹痛などに対して使われるセロトニン5HT-4作動薬・アセチルコリン拮抗薬・アセチルコリン作動薬についても、一時的な効果しか得られない可能性を指摘してきました。総じて、「吐き気・胃もたれを改善する」「腹痛・下痢を止める」ための西洋医学的治療は、多くの場合は対症療法に過ぎず、根本的な解決には至らないことを多く経験しています。また、食欲不振については、西洋医学的に確立された治療法はほぼ無いのが実情です。

吐き気・胃もたれ・食欲不振・腹痛・下痢などに対する漢方治療

胃腸症状を根本から治療してゆくためには、早期から漢方を併用することが必須であると私は考えています。とにかく胃腸から体調を整えてゆくのが漢方治療の基本でもあります。胃もたれ・げっぷ・空腹感の低下や消失を伴う食欲不振・吐き気に対しては、薬用人参などを含む漢方で胃腸の元気を確実に取り戻してゆく必要があります。また、下痢については、便意の切迫や強い腹痛を伴うかどうか、食べ物・飲み物の種類に左右されるかどうか、あるいは精神的なストレスに伴って生じるのかどうかなど、詳しく症状をお聞きしたうえで漢方を選ぶ必要があります。
漢方の考え方では、胃腸は外界からエネルギーを取り込むための大切な臓器です。その胃腸が虚弱であれば、エネルギーの取り込みが減るため、徐々に元気も失われていきます。「胃もたれしやすいけど、食べる量を減らせば大丈夫」「腹痛・下痢しやすいけど元気」とおっしゃるかもしれませんが、まだ年齢が若いうちは生まれつき持っている内面のエネルギーが補ってくれるため、あまり自覚症状が目立たないのです。しかし、特に年齢を重ねるにしたがい、外界からエネルギーをしっかり取り込むために胃腸を健康に保つことがより大切になってきます。

胃腸の元気が無くなると肌も荒れる?

胃腸の虚弱な状態が長引くと、エネルギー不足(元気が無くなる)だけではなく、徐々に「血の不足(血虚)」も生じます。漢方でいう「血の不足」は、西洋医学でいう貧血以外にも、肌にうるおいが無くなってカサついたり、抜け毛や白髪が増えたり、女性においては生理不順・生理痛・早発閉経などを引き起こしたりする原因となります。胃腸虚弱を立て直すことは、漢方では「うるおい不足」つまり肌のかさつき・白髪などの予防につながると考えられます。

フレイル予防も、まずは胃腸虚弱の改善から

近年、「フレイル(高齢者の心身の活動が低下した状態、虚弱な状態)」という言葉をよく耳にしませんか? フレイルを予防して健康寿命を延ばすためには、肉類をしっかり食べるなど栄養を十分に摂ることが推奨されています。しかし、せっかく栄養を摂っても、そこからエネルギーを取り込んでくれるはずの胃腸が虚弱であれば、意味が半減します。また、もともと胃腸が虚弱なために肉類を食べられず、フレイル状態に陥っているケースもあるでしょう。漢方で胃腸虚弱を改善するということは、総合的な「クオリティ・オブ・ライフ(QOL、生活の質)」の改善につながるのです。

(文責・岡本英輝)

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